ダリ展に行った

     強烈な風貌のダリ
     強烈な風貌のダリ

「スペインが生んだ奇才。過去最大規模の回顧展」。そんな宣伝の言葉に乗せられた私は、京都市美術館(岡崎公園内)で開催中のダリ展に行った。8月中旬の真夏日のことだ。

 

京都市の地下鉄東西線・東山駅で下車。少しでも涼を感じながら歩こうと、白川沿いに会場に向かった。この川は浅く水がきれいなので好きだ。小さなお子様ふたりと母親が、浅瀬で水遊びをしていた。3人とも裸足だ。ズボンやスカートが濡れているが、いっこうに気にならない様子。こうした光景を見ると、こちらまで幸せな気持ちになれる。「いいなあ」。

 

会場に到着。予想通りの行列だ。本展はガラ=サルバドール・ダリ財団(スペイン)、国立ソフィア王妃芸術センター(同)、ダリ美術館(アメリカ)、そして国内所蔵の作品も加えた大規模なものだ。

 

年代順に8章構成に展示された会場を、多くの観客と一緒に流れながら作品鑑賞を続けた。いわゆる「ダリ的な作品」や、映像、宝飾品、書籍の挿絵など多彩な作品群に驚く。そして、飴のようにグニャリと曲がった時計や、足の長い像の行進などを生み出した背景を知る。「なるほど、そうだったのか」。

 

なかでも妻となるガラとの出会いに、私は感銘を受けた。ダリより10歳も年上でバツイチ(これらを批難しているのではありません)の彼女は、ダリの絵の主要なモチーフとなり、モデルであり、その才能を発揮してプロデューサー的役割で作品を広く展開し、しかも彼にとっては最愛のミューズだったという。

 

「画家の妻たち」澤地久枝著(文藝春秋)で紹介されている彼女はこうだ。「彼の欲望、憤怒、不安、劣等感、狂気に引きさらわれるギリギリの魂の叫びをガラは理解し受け止める」「ガラなしでは自分はダリになれない、ガラは血液、そして酸素だとダリは直感する」。

 

この時ガラは詩人のポール・エリュアールの妻であり、ポールはダリの友人という立場。スペインのダリを訪ねてきた夫妻。そこで運命の出会いとなった。この先を私はここで書けない。

 

現在、ダリ展は9月14日(水)〜12月12日(月) 国立新美術館(東京・六本木)で開催中だ。