「MANHATTAN IN BLUE」

     私だけの素敵な時間に
     私だけの素敵な時間に

先日私は三重県へ心の洗濯にでかけたのですが、ある事に感動して手が震え動けなくなってしまいました。

 

早朝。シーサイドのリゾート・マンションにいた私は、MALTAのCDを聴きながら、森鴎外の「舞姫」(新潮文庫)を読んでいました。

 

かつて大学生だった頃、経済学部の私は隙をみては、文学部の山崎先生の講義を聴いていました。講義は「鴎外 森林太郎」で、ドイツ留学中の豊太郎とエリスとの恋愛話に夢中でした。

 

そんな鴎外の作品ですが、「或る日の夕暮れなりしが、余は・・・・略。」「今この処を過ぎんとするとき、鎖したる寺門の扉に寄りて、声を呑みつつ泣くひとりの少女あるを見たり。」

 

ここでした。この部分まで読み進んだ時、手が震えページをめくれなくなったのです。「ああ、どうしよう」。おそらく物語の概要を知っているので、そこから悲劇が始まると解っていたからでしょう。

 

ちょうどその時の音楽が、「MANHATTAN IN BLUE」だったんですね。皆さんご存知の様にMALTAが奏でるアルトサックスの、スローバラードのこの曲はジンときますね。

 

本を読むのを中断した私は、ベランダに出ました。海の向こうが赤く染まり、朝日が静かに昇ってきます。「ああ、なんて素敵な朝なんだ」。そんな時間によく似合う曲でした。